機械設計技術 歯車のバックラッシ0にする5つの方法

歯車のバックラッシ0にする5つの方法をご紹介しています。
バックラッシとは何か?バックラッシが大きいとどんな不具合があるのかなど、具定例をあげて詳しく解説しています。

 

【書き起こし】 機械設計技術 歯車のバックラッシ0にする5つの方法 

(00:25) こんにちは中村です。いつもご視聴ありがとうございます。 このチャンネルでは inventor 3 d cad の 使い方や、機械設計についてお話ししています。 今日は、バックラッシをゼロにする5つの方法について解説していきます。 今日お話しする内容は、次の6つですね。 1つ目 バックラッシとは 2つ目 方法1  歯厚減少を小さくする 3つ目 方法2 組み立て時に調整 4つ目 方法3 テ ーパギヤ 5つ目 方法4  シザーズ ギヤ 6つ目 方法5 ハーモニックドライブ 今日はこのような内容について、詳しく解説していきたいとおもいます。 はい、それではまずバックラッシについてご説明したいと思います。 このような模式図を用意しました。 モーターに赤色のピニオンがついていて、で 、それにかみ合うように大歯車、黄色の大歯車がかみ合っています。 横から見ると、 このような感じですね。 上からみると、このような感じです。 ちょっと動かしてみようと思います。
(01:32) はい、このようにピニオンが2回転すると、大 歯車が1回転すると、そういうような歯車ですね。 バックラッシは何かというと、ちょっと 拡大しますねー。 はい、このように歯車がかみ合った状態で この歯と歯の隙間、これがバックラッシですね。 今これはバックラッシがかなり小さい状態で書いています。 はい、このように動かすと歯と歯の間の隙間がほとんどなく、かみ合っていっているのがわかると思い ます。 これがバックラッシゼロの状態ですね。 では次にバックラッシが大きめについた 歯車を用意しようと思います。 はい、バックラッシが大きな歯車を用意し ました。 歯と歯がかみ合うときに、隙間が大きい状態、この部分ですね。 この部分の隙間が大きい 、これがバックラッシが大きいという言い方をします。 簡単に言うと、遊びが大きいということですね。
(02:39) これでちょっと動かしてみようと思います。 はい、このように 歯に隙間があるので、スムーズに滞りなくまわりやすいですね。 バックラッシがなぜ必要かというと、バックラッシがゼロだと隙間がないので、ギスギスして回らないということなんですね。 ですから、ギアにバックラッシは必ず必要です。 遊びがあることで、ギアがスムーズに 回るということですね。 バックラッシがゼロだと、隙間がないので競り合って動かない、という現象が起きてしまいます。 これがバックラッシの必要性です。 はい、それでは先ほどバックラッシは必要なものだという説明をしましたが、この バックラッシが大きすぎると不具合を起こす場合があります。 それをご説明します 。 このように赤色のピニオンと水色の大歯車 が、バックラッシが大きな状態でかみ合っていると、このようにピニオンが回転して いるのに大歯車の方が回転しない領域があるんですね。 これがバックラッシが大きいと、不具合を起こすパターンの原因の 一つです。
(03:54) これ何かというと、モーター側が回転しているのに大きいピニオン、水色の方が動かない状態があるということは、使い方によっては不具合を生じるということです。 例えばですけども、位置決めを正確にしないといけないターンテーブルがあった場合に、 ピニオンが360度動くと水色の大歯車の方は180度動くはずですね。 2対1の歯車なので、そういうふうになる はずですが、この遊びがあるとですね、ピニオンが360度回ってるのに 水色の大歯車は175度しか回らないと言うようなことが起こってしまいます。 それでは具体的にバックラッシが大きい と、どのような不具合が出るかという具体的な例を見ていきたいとおもいます。 このようにペットボトルがターンテーブル の上で8本並んでいます。 注入ノズルで、このペットボトル の中に液体を注入する装置だと考えてください。 で1ピッチ、この場合ですと45度ですね。これを正確に回して位置決めする必要が あります。
(05:04) このターンテーブルの下に、先ほどの減速機構が隠れています。 はい、このような感じですね。 ここにモーターの減速機があって、ターンテーブルを回していると、そのような 状態ですね。 上からみると、このようにターンテーブルの 中心に水色の大歯車があります。 で、その大歯車をモーターのピニオンで回すと、そういうような装置ですね。 はい、それでは1ピッチ回転させようと思います。 はい、これで45度正確に回転しました。 このターンテーブルが正確に45度回転するためには、バックラッシが小さくてガタがない状態が必要です。 これが例えばバックラッシが大きいと、ピニオンが90度もあってターンテーブルが 45度回るはずが、ピニオンが90度回っても、ターンテーブルが40度しか回らないとか 42度しか回らない、というようなことが起こってしまいます。 はい、このようにターンテーブルが正確に 45度回らずにピニオンと大歯車のあそび の分、バックラッシの分、ガタが大きいので正確に回らずに42度ぐらいで止まってしまいました。
(06:23) そうすると、注入ノズルとペットボトルの位置がずれてしまって、注入液が溢れてしまうというようなことが起こりますね。 これが正確な位置決めが必要な装置などの場合に、バックラッシが大きいと不具合を起こす典型的な例です。 ということで、バックラッシを小さくする方法が必要になってくるわけですね。 それでは具体的な方法を、5つご紹介していきたいとおもいます。 はい、それでは具体的にバックラッシを 小さくする方法を、解説していきたいとおもいます。 まず1つ目は、歯厚減少量を小さくするという方法です。 このようにかみあった歯車があって、このかみ合い部分を少し拡大してみようと思います。 はい、このようにかみあった部分を拡大すると、今この状態はバックラッシがほぼゼロの状態で描かれています。 これが理論的な バックラッシゼロの状態ですけども、これだとギスギスして競り合ってスムーズに回る ことができません。 歯厚というのは、この部分の寸法ですね。 これを歯厚といいます。
(07:33) で、バックラッシを設ける場合は、この歯厚を少し小さく痩せさせるということですね。 図面上で歯厚寸法を指定する場合は、交差を記入します。 もしくは、要目表にバックラッシの寸法を記入します。 そうすることで歯厚が少し小さく作られて、バックラッシが出来上がるということですね。 通常 バックラッシは0.1mm とか0.2mm の隙間を設けるのが通常です。 はい、これがバックラッシを少し設けた状態です。 黄色い方の歯車を片側100分の5mmだけ歯厚を小さくして痩せさせました。 この状態でバックラッシができたという ことですね。 こうすることで、遊びができて スムーズに回ることができます。 で、この歯厚減少量をなるべく小さくする 、痩せる量を小さくすることで、わずかな隙間のバックラッシを確保して、スムーズに 回るようにする、という風にすると、なるべくバックラッシを小さくして回転精度を高めることができます。 これが歯厚減少量をなるべく小さくして、バックラッシをゼロに近づけるという方法ですね。
(08:54) それで今黄色側の歯車だけを少し減少させ ましたけども、通常は両方の歯車を減少させ て、トータルの隙間でバックラッシを設定するというのが通常だと思います。 はい、それではバックラッシを小さくする2つ目の方法をご紹介します。 このようにピリオンと大歯車がかみ合って いて歯車の中心距離ですね、これを組み立て時に調整する方法というのがあります。 どういうことかといいますと、はい、今このようにバックラッシが約コンマ2、0.2mmぐらいある状態です。 これで下側のオレンジ色のピニオンを水色の歯車の方に近づけようと思います。 はい、これでバックラッシがほぼゼロに なりましたね。 このように組み立てで歯車の 中心距離を調整してバックラッシの量を調整する方法があります。 これが2つ目の 方法ですね。 このようにピニオンと大歯車の中心間距離、 これを調整することでバックラッシを組み立て時に調整することができます。 これ が2つ目の方法です はい、それではバックラッシを小さくする 方法 3つ目はテーパギヤです。
(10:13) この図のように下側のオレンジ色のピニオンと、大歯車がかみ合っていますけども、これ歯車がテーパー状になっているんですね。 ちょっと横から見てみたいと思います。 はい、このようにヒナ歯車が円すい状して いるんですね。 これを軸方向に移動させることで、バックラッシを調整することができます。 ちょっとやってみますねー。 はい、ピニオンの方を軸方向にずらすことで、大歯車との噛み合いが変わります。 ちょっと 角度を変えて見てみようと思います。 このような感じですね。 はい、拡大してみますと、今この状態はバックラッシ、隙間があるのが分かると思います。 これでオレンジ色のピニオンの方を軸方向にずらします。 はい、これでバックラッシが消えたゼロの状態になったのがわかると思います。 はい、このような状態ですね。 正面から見ると、バックラッシが消えているのがわかると思います。
(11:19) このように隙間なく、かみ合っているということですね。 バックラッシを増やしたい、ガタを大きくしたい場合は、逆方向にずらします。 そうすることで、バックラッシが大きくなってガタが大きくなると。 はい、これがテーパーギアの特徴で軸方向にずらす構造設けておくことで、組み立て時にバックラッシを調整することができるんですね。 これが3つ目の方法です。 はい、バックラッシを消す方法4つ目は、 シーザーズギアです。 この図のように ピニオンの方、これが2枚重ねになっているのが分かると思います。 ちょっと拡大します ね。 はい、このように黒い歯車とオレンジ色の歯車、これが2枚重ねになっていて、少し位相がずれているのがわかると思います。 ちょっと上から見ますね。 はい、このような状態ですね。 もともと黒の歯車だけだとバックラッシが大きいんですけども、オレンジ色、こっちの歯車を少しだけずらして、バックラッシを消すように位相をずらして配置するんですね。 でこの黒とオレンジ色の歯車をボルト締めして固定し ます。
(12:35) そうすることでバックラッシを組み立て時に調整して、バックラッシをなるべく 小さくすることができるとそういう機構です。 シザーズというのは挟むという意味があるんですね。 ですから、相手側の歯車を2枚の歯車で挟み込むと、そういう考え方になります。 で、この黒とオレンジ色の歯車は、ボルト締めする場合もあれば、バネでお互いに引っ張っておいて、挟み込むという方法もあります。 これは実際にこのようなバネで引っ張る歯車が、市販で売られていますね。 あとでご紹介しますけれども、これをシザーズギヤと言います。 これでちょっと動かしてみようと思います。 はい、このような感じでオレンジ色と黒の歯車がバッグラッシを消した状態で、スムーズに回っているのがよくわかると思います。 はい、こちらが市販されているシザーズギヤですね。
(13:41) この左の写真のように、バネでお互い2枚を引っ張っている場合と、ボルト締めしている場合がありますね。 写真で見ていただくと分かると思いますけども、歯車が2枚重なっているのがわかると思います。 はい、バックラッシをゼロにする方法5つ 目は、ハーモニックドライブです。 これは ハーモニックドライブシステムズという会社の特殊な歯車ですね。 こちらが ハーモニックドライブ社のホームページですけども、この右側の構造、これが ハーモニックドライブの構造ですね。 部品としては3つだけです。 ウェーブ・ ジェネレーター  フレクスプライン サーキュラ・スプラインですね。 このフレクスプラインというのが、たわむ歯車で、サーキュラ・スプラインと いうのが、内刃の歯車です。 ウェーブ・ジェネレーターが回ることで、このフレクスプラインという歯車がたわんで、サーキュラ・スプラインとひとつずつ歯が かみ合いがずれていくんですね。 で、この機構を紹介したハーモニックドライブ社の動画がありますので、そちらを見てみたいと思います。 はい、これでおおよそのイメージがつかめたと思うんですけども、歯車がたわんでひと歯ずつずれていって、それで減速してるんですね。
(15:19) これバックラッシは、ほぼゼロです。 メーカーさんに来ていただいて、実際に現物を見さしていただいたんですけども、これはすごい発明だと思いますね。 これがバックラッシをゼロにする方法の 最後、5つ目の方法ハーモニックドライブ です。 はい、それでは最後に今日ご紹介したバー クラッシを小さくする、またはゼロにする 機構を、わかりやすく解説してくれている サイトがオリエンタルモーターにありまし たので、これをご紹介したいと思います。 概要欄にリンクを貼っておきますので、後でご覧になってください。 はい、まずこの TSギヤというやつですけども、このギアヘッドは最初にご紹介し た精度良く歯厚をつくって、バックラッシを小さくするというやつですね。 TSギヤは、歯車加工の高精度 および熱処理での寸法変化量を考慮し、歯車加工を実施することで、バックラッシの影響を低減しています。 TSギヤは特別な機構の必要ないシンプルな構造を実現しています。 ということですね。はい、次はTHギヤですね。
(16:27) これがご紹介したテーパギヤで軸方向に組み立て時に調整することで バックラッシを消しています。 THギヤは平歯車減速機の出力段と、それに 噛み合う歯車にテーパギヤを採用してい ます。 テーパギヤは軸方向に連続的に点を変化 させたものです。 このテーパギヤ同士の微調整をして、バックラッシを抑えています、ということですね。 はい、次は PN ギヤですね 。これはいわゆるシザーズギヤです。 ここで紹介されている内容は、遊星歯車ですね 。遊星歯車の遊星ギヤを上段と下段2つに分けて、これをシザーズにしているんですね。 挟み込んでいるということです。 PN ギヤは PSギヤと同じ遊星歯車機構の ギヤです。 各部品の加工精度を向上させ、バックラッシ除去機構を採用したバックラッシ3分以内を実現しています。 バックラッシ除去機構は、内歯車と遊星歯車 それぞれ上下2段に配置し、内歯車を円周方向にひねっています。 そのため、上段の 内歯車と遊星歯車はクロックワイズ方向側のバックラッシを除去し、下段の内歯車と遊星歯車はカウンタークロックワイズ方向側のバッグラッシを除去しています。
(17:44) シザーズギヤ方式を採用し、低減速比からノンバックラッシを実現しています、ということですね。 はい、最後はハーモニックギヤですね。構造原理を書いてくれています。 先ほど観ていただいたように、フレクスプラインがたわんで、ひと歯ずつずれていくんですね。 ハーモニックギヤは一般の平歯車による減速機とは異なり、バックラッシがありません。 同時に噛み合う歯数が多く、歯のピッチ誤差や累積ピッチ誤差の回転精度への影響が平均化され、高い位置決め精度が得られますと書いて ますね。 これがハーモニックドライブの最大の特徴だといえると思います。 はい、今日はバックラッシをゼロにする5 つの方法についてご紹介しました。 今日の動画は以上となります。 今日もご視聴ありがとうございました。 また次の動画でお 会いしましょう。

・ハーモニックドライブシステムズ
https://www.hds.co.jp/products/hd_theory/

・協育歯車ノーバックラッシギヤ
https://www.kggear.co.jp/stockgear/anti-backlash-spur-gears/

・オリエンタルモーターギヤヘッド
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/gear_head04/

・この動画は現役の機械設計エンジニアが作成しています
・講師は3D CAD歴26年、機械設計技術者1級を取得しています
・色覚弱者の方にも無理なく見ていただけるように、配色に配慮しております
#機械設計CADの学校動画一覧 #機械設計 #INVENTOR

関連記事一覧

Skip to content