ステッピングモーターの動作原理, 構造について解説 【イチケン電子基礎シリーズ】

ステッピングモーターはオープンループで制御可能なのでサーボモータを使うより価格を抑えたり、システム構成をシンプルにできる特長があります。

 

【書き起こし】ステッピングモーターの動作原理, 構造について解説 【イチケン電子基礎シリーズ】 

(00:00) この動画はAltiumとOctopartの提供でお送りします こんにちは 今日はステッピングモーターについて解説します こちらがステッピングモーターです こちらのステッピングモーターは中身が見えるようにしたものです ちなみに英語だとステッパーモーターと言います 英語でテクニカルなディスカッションをするときに ステッピングモーターと言ってもたぶん伝わらないので注意しましょう まず最初にステッピングモーターの構造を見ていきたいと思います 中に入っている回転子を抜きます ステッピングモーターは2つの部品からできています これが回転子 そしてこちらが固定子です 固定子の部分を少し詳しく見ていきます 固定子は鉄心とコイルでできています この鉄心の内側を見てみるとこのように溝が彫ってありますが これは小歯といいます 小さい歯と書きますね この小歯はステッピングモーターで非常に重要な役割をします そして固定子側の小歯のところにこのように導線がぐるぐると巻いてあります これはコイルです このコイルに電流を流すことによって回転子を回転させます これは2相ステッピングモーターです
(01:08) このステッピングモーターはコイルは合計で8個あります 8個のうち4つをA相そして残りの4つをB相 A相B相と2つあるので2相ステッピングモーターです 次にこちらは回転子です 回転子も固定子と同じようにこの回転子の部分に小歯が付いています この回転子なんですけども中に磁石が入っています そこにかぶせるようにして小歯のついた鉄心を被せます これが回転子の構造です 回転子は磁石と鉄心でできています ここに円筒状の磁石があってそれぞれN極とS極があります そこに小歯付きの鉄心を被せます そうしますとこの形になるわけです ちょっと平面だと分かりづらいので3Dっぽく書きました 円筒状の磁石があってでそこに小歯が付いている 蓋みたいな鉄心をかぶせるわけです 回転子の小歯の配置をよく見てほしいのですけども 小歯の配置は互い違いになっています わかりますか これは鉄心を上からとそして軸から見た図です
(02:12) まず最初にこちらの鉄心を上から見てみます そうしますとこのようになっているわけですね 回転子の中身は磁石でできていてそしてそこに鉄心をかぶせるわけです 当然鉄心は磁化されます そして小歯がこのように交互に並んでいるわけです こちらのN極側の方は当然N極に磁化されますので N・N・Nっていうふうに小歯のちょうど飛び出ているところが 外から見るとN極に見えるわけです 反対のS極はどうかというとこちらも同様ですね 小歯の飛び出ている部分が外から見るとS極に見えるわけです そして小歯のN極とS極は交互に並んでいます 次は軸から見た図です 先程はこちらの方向から見ていましたけども 次はこちらの方向から見てみます 軸から見るとN極とS極がそれぞれ交互に並んでいるように見えます 当然どちらかが手前にあってそしてもう片方の極が奥側にある そういったことにはなりますけどもN極とS極がそれぞれ交互に並んでいる そしてこの被せている鉄心なんですけどもそれぞれ小歯が50個ずつあります
(03:20) ということはこの回転子は磁極がいくつあるか 50個の小歯があってそれが互い違いに並んでいますので 100極の磁石が付いている回転子に見えます ここに図を書き足しましたがこれが固定子ですね その固定子に小歯が付いていると この固定子に巻いてあるコイルに電流を流すと電磁石みたいになって 回転子側の小歯と固定子側の小歯が引き寄せられると ここにA相とB相がありますけども どちらの相に電流を流すかそして電流の方向によって この回転の方向であったりあとは回転の角度が決まります これがステッピングモーターが回転する原理です ステッピングモーターの何が良いのか それは回転子と固定子の構造によって回転する角度が決まっていることです 動画の最後の方で説明するんですけども サーボモーターに必須なこういったエンコーダーとかを必要とせずに 必要な回転角を回すことができます フィードバックループとかを使わずにオープンループで可能です
(04:25) ちなみにステッピングモーターにはその構造によって何種類かあります 1つ目がPM型というものです この回転子の部分には磁石しか使っていません この固定子と回転子のマグネットトルクを使って回転子を回します ただこの回転子の部分を磁極をいくつも細かく細かくしていくのには 限界がありますのであまり極数は多くできません 次がVR型ですね リラクタンストルクを使ったものです 固定子の鉄心があってそして回転子も同じように鉄心でできています 磁石は使っていません モーターのタイプでいうと これはステッピングモーターっていうくくりではなくて スイッチトリラクタンスモーターと言った方がいいかもしれません このスイッチトリラクタンスモーターを ステッピングモーターに使っていると 今日紹介したステッピングモーターはハイブリッド型といいます このPM型のマグネットトルクとそしてVR型のリラクタンストルク この回転子の中には磁石が入っていて その磁石に鉄心を被せるそういった構造をしていて それがハイブリッド型のステッピングモーターです
(05:32) では実際にステッピングモーターを回してみたいと思います ステッピングモーターにはコイルが8個あります そのうちの4つがA相で他の4つがB相のコイルです これは2相モーターなんですけどもA相とB相のコイルは それぞれ45°ずつずれて配置されています このモーターの場合A相のコイルはここという風になります B相のコイルはというと斜めのところという風になります ではA相とB相のコイルに電流を流してステッピングモーターを回します ではA相の方から電流を流していきます この回転子をよく見ててください いきます ちょっと回転した分かりましたでしょうか 次はB相に電流を流します また少し回転しましたね 次電流を流す方向を変えます またA相に電流を流すと反時計回りに少しずつ回転するんですね B相に電流を流します
(06:40) また電流を流す方向を変えてA相、B相… 少しずつ回転しているのがお分かりかと思います これまで話してきたように ステッピングモーターは回転子と固定子と小歯の組み合わせ そして固定子にあるA相とB相のコイルに流す電流 そしてそのコイルに流す電流の方向をうまく組み合わせることによって この回転子を回します ちなみにステッピングモーターの動作原理であったり 後は駆動方法については オリエンタルモーターのテクニカルマニュアルであったり あとはロームのウェブページに詳しく載っていますので より詳しく知りたい人はそちらを見ることをお勧めします 概要欄にリンクあります ステッピングモーターなんですけども これは単体だけでも一応使えるんですけども 電流を流したりするといった制御をするには 通常こちらのモータードライバーを一緒に使います
(07:47) 先程A相とB相のコイルに電流を流したりしていましたけども そういった制御をこちらのモータードライバーは全てやってくれます ステッピングモーターにモータードライバーを繋ぎました ちなみにこちらのモータードライバーなんですけども パルスを一回入力すると こちらのステッピングモーターを1.8°回転させるように制御してくれます 例えば10パルス入力すると18°ステッピングモーターが回転します ではまず1Hzのパルスを入力してみます いきます 1秒間に1.8°ずつ ステッピングモーターが回転しているのが分かりますでしょうか 周波数をもっと高くします こんな感じで結構振動がすごいんですね 今マイクロステップを入れていないので振動がかなり出ています 今モータードライバーに200Hzのパルスを入力しています ですのでこのステッピングモーターは1秒間に1回転します
(08:52) 1.8°x200 = 360° 今ステッピングモーターを回していて そのステッピングモーターのA相の電流を見ています A相の電流はプラス、マイナスで電流を流しています つまりコイルに流す電流の方向を回転の状態によって変えているわけです 当然B相にも電流は流れていますが位相が少し違った電流が流れます 90°くらい遅れた電流はB相に流れていると記憶しています ステッピングモーターは今回しているんですけども ステッピングモーターを止めます はい止めました ステッピングモーターは回っていませんが電流は流れ続けています これはステッピングモーターの軸が回転しないように 固定子に電流を流して保持しているためです 結構力強くやらないと軸は回転しません ですのでステッピングモーターは止まっているんですけども 電流は常に流しているそういった状態にあります 次は回転数をもっと高くしていきます つまりパルスの周波数を高くしていきます こんな感じでどんどん周波数を高くしていきます
(10:00) 電流の波形を少し注目してください 先程と比べて電流の波形がかなり鈍ってきていますね これは基本的にステッピングモーターがインダクタンス成分だから こうなっているんですけども ステッピングモーターのトルクというのは基本的に電流に比例します 電流の振幅が大きければ大きいほどトルクは強いんですが 回転数が高くなってくるとこのように電流の波形がかなり鈍ってきています ということはトルクが少なくなる ですのでステッピングモーターは高回転の時にはトルクは少なくなります 逆に低回転の時が一番トルクが大きい そういった特徴を持っているのがステッピングモーターです 先ほどまでは1パルスの回転数が1.8°でしたが ステッピングモーターの制御方法としてマイクロステップというのがあります それを試してみます 先ほど電流が矩形波状だったのに比べて 今マイクロステップの制御をしているんですけども 正弦波状の電流になっていますね 分かりますでしょうか
(11:03) これは電流の振幅を制御することによって 1パルス1.8°で回転していたものを1パルスをさらに細かく分割して ステッピングモーターを回す制御方法になります マイクロステップを説明しやすくする為に磁極の数を減らしました これが回転子でこれが固定子のコイルAとコイルBです A相とB相ですね まず最初にA相に電流を流します 1A流したとしますか そしてB相には0Aを流したとします そうしますとA相のコイルに磁束ができますので とりあえず回転子は今回転しません 次90°回転させたいとします そうした時にどうするかA相に流している電流を0Aにして 次B相に流す電流を1Aにします そうしますとこのA相の磁束はなくなってB相に磁束ができるわけです そうしますとその磁束にしたがってこの回転子は時計方向に回転します これがマイクロステップを導入する前です
(12:10) ではマイクロステップとはどういったものなのか 例えば今90°で回転させていましたけども そこの間に45°の回転を入れたいとします そうしますと最初コイルAに流していた1Aを1/√2 A そしてコイルBにも1/√2 Aを流します そうしますとコイルAとコイルBの両方に磁束が発生した状態になります この磁束を合成するとどうなるか この斜め方向に長さ1の磁束ができるわけです これで90°しか回転しなかったものが この中間の45°にできるようになりました さらにもっと細かく30°とかで回転させたい場合はどうするか 1A 0Aそしてこちらをですね (√3)/2 A流すとそしてコイルBの方は1/2 Aを流す そうしますと磁束の電流の合成は √(((√3)/2)^2+(1/2)^2) = 1なので この30°の方向に合成の磁束が向くわけですね
(13:21) ですので30°回転すると ここまで説明してきてマイクロステップは結局何をやっているのかというと このコイルAとコイルBに流す電流の比率 電流の振幅を自在に制御することによって 回転子の回転角を細かく刻んでいく それがマイクロステップです ちなみにマイクロステップはどうやって回路で制御しているのか これがモータードライバです フルブリッジの回路が2つ入っています ここにスイッチがあるんですけどもこれはパワー半導体です そのパワー半導体はうまくPWM制御することによって このA相とB相に流れる電流を制御しているんですね では実際に通常の制御とマイクロステップの違いを見ていきましょう このように通常の動作ですとステッピングモーターは カクッ、カクッ、カクッいう風に動いていきますけども マイクロステップを入れている方は かなりスムーズに動いていると思います カクカク感というのが全くありません マイクロステップのステップ幅みたいなのがあるんですけども そのステップをどんどん細かくしていけばしていく程
(14:27) 角度の分解能は上がっていきます ステッピングモーターの何が良いのか それはオープンループで回転角を制御できることです しかもその回転角を制御するためにエンコーダーとかは特に必要ありません ステッピングモーターの構造によって決まる分の回転角分回転子を回せます こういった特徴を生かして工場のコンベヤーであったり あとはそこまで精度の要求されない位置合わせであったり そういったところにステッピングモーターは使われます 3Dプリンターとかにもよく使われていますね ステッピングモーターは値段が安いんですね エンコーダーといった精密な部品が付いていないので 結構シンプルな作りをしていますのでその分値段を下げられる ただしステッピングモーターは脱調をすることがあります 保持できる以上のトルクを外から加えると脱調をします 回転角がちょっとずれるんですね しかもオープンループなので脱調したことに気付きません エンコーダーが付いているステッピングモーターとかもあるみたいですけどね ここにサーボモーターを用意しました
(15:32) これは安川電機製の1.5kWくらいのサーボモーターを分解したものです これが回転子です もう中に鉄心が入っていて そこの表面に永久磁石を貼り付けたような形になっています こちらのステッピングモーターとは結構構造が違うんですね そしてこれが固定子で普通の永久磁石型の同期電動機と同じですね これがサーボモーターに付いているエンコーダーですね このエンコーダーを使うことによって高精度な回転角を制御できると ですのでサーボモーターは高精度な位置合わせであったり そういったことによく使われます ただこういった精密な部品があったりするので サーボモーターの値段は少しだけ ステッピングモーターと比べると高くなる傾向にあります ということで今日はステッピングモーターの動作原理を 簡単に説明してきました 簡単に説明したんですけどもどういう風に動作するのか というのがお分かりいただけたかと思います それでは今日のスポンサーのAltiumの紹介です どうぞ 今日のスポンサーは回路CADのAltiumですが そこが提供する部品サーチエンジンOctopartを今日は紹介します
(16:40) Octopartの何がいいか 部品をウェブ上で一括で管理できて しかもその部品をワンクリックで注文できることです とりあえず部品を検索しますか 3端子レギュレーター7805 いろいろな7805がある訳なんですけどもこれにします ディストリビューターあとは価格の履歴そしてCADモデルなんかも 色々ダウンロードできるようになっています 一番の特徴、部品表を作って一括で注文します 追加した部品を見るためには右上のBOM Toolを開きます そうしますと先ほど保存した部品を開くことができます 色々な部品のディストリビューターがあるんですけども そこを一括で注文できます ここでBuy Nowを押すとディストリビューターのサイトに飛んで そしてもう買い物かごの中に全部部品が入っている状態になるわけですね ちょっと格好良く言うとですね こういったツールを使ってサプライチェーンマネジメントを簡単にしましょう そういった話です こんな感じでOctpartは無料で使えてしかも使い方は簡単ですので 皆さんぜひ使ってみてください
(17:43) 次回の動画何をやろうかっていうのを考えてるんですけども 電動機のまとめをやるか それとも電気自動車のパワー半導体とかについてちょっと話そうか 未定ですけどもそのどちらかをやる予定です それでは最後まで動画のご視聴ありがとうございました Tシャツ販売中 詳しくは概要欄から

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✅ステッピングモータについての記事
オリエンタルモーター https://bit.ly/3vpvdlQ
ローム https://bit.ly/3PHFmlL

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■使用機材(amazonアソシエイトリンク含む)
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0:00 ステッピングモーターの構造
4:25 ステッピングモータの種類
5:32 ステッピングモータの固定子に電流を流す
7:35 モータードライバを使う
8:56 ステッピングモーターの電流波形と回転数, トルクの関係
10:42 マイクロステップは分解能を高くする
14:28 ステッピングモータの長所
16:27 Octopartについて
17:42 次回

■ビジネス関係のお問い合わせ→ inquiry@ichiken-engineering.com
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