アンギュラ玉軸受とボールベアリング(深溝玉軸受)との違い、接触角の意味と高速性能、アキシアル荷重(スラスト荷重)の考え方を詳しく解説しました。スピンドルモータを題材にしてアンギュラ玉軸受の使い方を理解できる内容になっています。
【書き起こし】
(21) 機械設計技術 アンギュラ玉軸受 ベアリングの仕組みと機能 深溝玉軸受との違い 接触角の意味と使い方 背面合わせと正面合わせ
(00:14) こんにちは、中村です。いつもご視聴ありがとうございます。 このチャンネルでは inventor 3 d cad の使い方や機械設計についてお話ししています。 今日はアンギュラ玉軸受の性能についてお話ししていきます。 今日お話しする内容は次の3つですね。 1つ目、スラスト荷重を受けられる 2つ目、接触角と高速性能の関係 3つ目、接触角とスラスト荷重の関係 それでは今日も inventor 3 dcad のアニメーションを使いながら 解説していきたいとおもいます。 はい、それではアンギュラ玉軸受の基本構造 について見ていきたいとおもいます。 左側がアンギュラ玉軸受です。右側が深溝玉軸受です。 ぱっと見たところ、そんなに構造の違いを分かりませんけども、ちょっと断面にしてみたいと思います。 はい、これで断面になりました。 はい、断面を見てみますと左側がアンギュラ で、右側が深溝です。 この違いを見ていただくと分かります通り、内輪と外輪の形状が違うと思います。
(01:21) これがアンギュラの構造的な特徴になります。 深溝と最大の違いは、スラスト荷重を受けられるということですね。 深溝玉軸受もある程度を受け入れますけれども、大きなスラスト荷重は受けられません。 スラスト荷重て何かというと、軸方向の荷重ですね。 これを アンギュラは大きく受けることができる構造になっているということです。 で アンギュラの場合は両側のスラスト荷重を受けれるのではなくて、片側方しか受けられません。 ですから通常アンギュラは、対抗させて2つ以上使うというのが、通常の使い方 です。 そうすることで、両方向のスラスト荷重 を受けれるようになります。 はい、それでは具体的にどのように使われて いるか構造を見ていきたいと思います。 これ はビルトイン型のスピンドルモータの一例ですね。 塾受けとモーターが一体になって いてこの構造自体で大きなスラスト荷重とラジアル荷重を受けれるようになっています。 真ん中の黄色い部分がモーターの回転子、かつ主軸です。モーターと主軸が一体になっているものですね。
(02:31) で、その両側にアンギュラ玉軸受を2 個ずつ配置して、合計4つ使われています。 このような配置にすることで、ラジアル荷重 とスラスト荷重を大きく受けることができて、高速回転かつ剛性のある構造を実現することができます。 では少し回転させてみようと思います。 はい、それではこのようなスピンドルユニットがどのような使い方をされているかと言うと、 マシニングセンターとか旋盤の主軸に使われています。工作機械というのは軸合成が必要で軸がぶれてはいけません。 高い剛性と高速性能、これを両立させる必要があります。 アンギュラ玉軸受が非常に適しているということができます。 はい、それではまず接触角についての話をし ていきます。 深溝玉軸受と一番違うところは、ボールと外輪、内輪の接触する位置が角度を持っていて、これを接触角といいます。 この接触角アルファ、これは通常15度から60度ぐらいの範囲で各メーカーラインナップされています。
(03:49) で、この接触角があることでスラスト荷重を 受けることができます。 で片側のスラスト荷重しか受けれませんので、通常2個以上対抗して使います。 対抗というのは向かい合わせで使うということですね。 そうすることで両方向のスラスト荷重を受けることが出来ます。 スラスト荷重は別名アキシアル荷重という言い方もします。 それでこの接触角、これが大きくなると受けることのできるスラスト荷重が大きくなっていきます。 接触角が小さくなると受けることのできるスラスト荷重が小さくなります。 逆に接触角が小さくなると今度高速性能が 上がります。 接触角が大きくなると高速性能が下がって きます。 ですから高速性能とスラスト荷重を受ける能力がトレードオフの関係にあるということですね。 それでは具体的な数字を見ていきたいと 思います。 こちらは NSKのアンギュラのカタログになります。 型式7201で検証し ていきたいと思います。
(04:56) 型式7201の後ろ側にABC という記号がついています。 これが接触角を表す記号です。 A は30度 B は40度 C は15度を 表します。 一番接触角の小さな C を見てみますと、許容回転数がグリス潤滑で 3万6000回転ですね。 次に接触角30度の記号A を見てみると、回転数が2万 6000回転ですね。 次に一番接触角の大きな B 、これを見てみますと許容回転数が1万8000回転です。 ということで接触角が大きくなればなるほど、許容回転数も小さくなるというのが分かると思います。 それで高回転を求める場合はグリース潤滑ではなくて、油潤滑の方が許容回転数は飛躍的に大きくなり ます。 それではこれがビルトイン型スピンドル モーターに配列されたアンギュラ玉軸受の 構造ですね。 左側に2つ、右側に2つ配置され ています。
(06:02) このような配置の仕方を背面合わせと言います。 接触角が左側は左方向、右側は右方向に傾いています。 こうすることで作用点の距離を大きくとることができるん ですね。 これはモーメント荷重に対して強くなるという配列です。 これを逆に正面合わせにすると、接触角が内側に向いていきますのでモーメント荷重に対しては弱くなるという配列になりますね。 この接触角が大きくなればなるほど、作用点の距離もどんどん大きくなっていくので、モーメント荷重にも強くなってスラスト荷重にも強くなるということがいえます。 逆に接触角を小さくすると高速性が上がって作用点の距離が縮まっていきますので、モーメント荷重には弱くなっていくということですね。 モーメント荷重に対しては弱くなっていき ますけども高速性は上がってくるということです。 ですから軸受にかかる荷重を計算して、高速 性と軸の合成両方保てるいいバランスを とって接触角を決めていく必要があります 。 でアンギュラの特性としてラジアル荷重 を大きく受けたい場合は、スラスト荷重は 小さく受けるしかありません。
(07:17) 逆にスラスト荷重を大きく受けたい場合は、ラジアル荷重を小さく受けると。 これもトレードオフの関係にあるということです。 アンギュラ玉軸受だけで荷重を受けきれ ない場合は、円筒ころ軸受を組み合わせて 使うといいと思います。 はい、それでは深溝玉軸受とアンギュラ玉 軸受の高速性能の違いについて具体的な 数字を見ていきたいとおもいます。 内径が 12で外径が32の同じ大きさのもので 比べますと、深溝の場合型式6201これ のグリース潤滑の許容回転数は2万2000回転ですね。 油潤滑で2万8000回転となっています。 これと同じ大きさのアンギュラを見てみたいと思います。 こちらがアンギュラのカタログですね。 同じ内径12、外径32の型式7201の Cを見てみたいと思います。 グリース潤滑 で3万6000回転、油潤滑で5万回転ですね 。 その差はグリース潤滑で14000回転、油潤滑で2万2000回転も許容回転数が アンギュラの方が高いということになります。
(08:34) この高速性能が高いスラスト荷重を受け入れるというのが、アンギュラの最大の特徴となっています。 でこの高速回転の機能を発揮するためには、適切な予圧をかけなければいけませんけども、 この予圧に関しては、また別の動画で詳しく解説していきたいとおもいます。 それでは今日の動画は以上となります。 今日もご視聴ありがとうございました。また次の動画でお会いしましょう。
・NSK深溝玉軸受カタログ
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/split/1103/nsk_cat-1103c_c004-c047.pdf
・NSKアンギュラ玉軸受カタログ
https://www.nsk.com/jp/common/data/ctrgPdf/bearings/split/1102/nsk_cat_1102q_2015-10_b46-b75.pdf
・この動画は現役の機械設計エンジニアが作成しています
・講師は3D CAD歴26年、機械設計技術者1級を取得しています
・色覚弱者の方にも無理なく見ていただけるように、配色に配慮しております
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