ねじの強度計算と材質の選定方法 強度区分と破断、せん断破壊と引張り破壊

ねじの使い方と機能、ボルト強度区分や強度計算について詳しく解説しました。材質選定の考え方、セラミックねじや樹脂ねじ、ステンレスボルトについても解説しています。

 

 

【書き起こし】(2) ねじの強度計算と材質の選定方法 強度区分と破断、せん断破壊と引張り破壊

(00:15) こんにちは、中村です。いつもご視聴ありがとう ございます。 このチャンネルでは 、inventor 3 d cad の 使い方や機械設計についてお話ししています。 今日は、ねじの選定の考え方について、お話ししていきます。 今日お話しする内容は、次の3つですね。 ねじ山の種類と特徴、 サイズの選び方、 材質の選び方、 今日はこの3つについて、詳しく解説していきたいと思います。 はい、まずねじの一つ目の役割は締結ですね。 部品と部品をくっつけて、固定する役割があります。 これは、車のエンジンの排気をマフラーの方に導く部品、エキゾーストマニホールドですね。 はい、これに排気管をジョイントするために、 このフランジを、ボルト締めすることを想定します。 はいフランジを合わせて、 ボルト締めをしていきます。
(01:20) はい、これでフランジの合わせ面に、ボルトが取り付けられて、締結することができました。 はい、それで締結に使われるボルト、ねじの形状、特徴は、メートルねじというねじですね。 はい、メートルねじは、このようにねじ山が、60度の三角形をしています。メートルねじというだけあって、ネジの外径は mm で表します。 今このボルトは、M12の メートルねじの六角ボルトですね。 このねじ山の、鶴巻状の形状、これを利用してねじ を回すことで、軸方向の推力を発生させます。 これは、くさび効果を利用していると、いうこと ですね。 ねじは、くさび効果を利用して締結すると、これがネジの締結力を発生させるメカニズムです。 はい、それでは2つ目のネジの特徴、機能は、 送りねじですね。ものを移動させるために使うことができます。 締結の場合は、ボルトが進んでいきましたけども、 この場合はナットが進みます。
(02:32) ちょっと動かしてみますね。 はい、このようにボルトの方を回転だけ自由にさせて、 軸方向に動かないような機構にしておくことで、 モノの移動をすることが出来ます。 これが送りねじの特徴ですね。 送りねじの代表的なねじの形は、台形ねじですね。 はい、このようにねじ山が3角ではなくて、 台形の形をしています。 この場合は、30度の台形ねじで描いています。 記号で言うと、Tr これが台形ねじを表す記号です。 外径が12mmなので Tr 12と書きます。 ねじ山のピッチが、2mmなので、 Tr 12× 2 ですね。 これが30度台形ねじの、外形12、ピッチ2 の表記方法です。 はい、3つ目のねじの特徴、種類は接続です。接続って何かというと、流体が通る配管を接続するの接続ですね。 配管は分岐したり、いろいろな方向に折れ曲がったりするので、 その分岐をさせる継手、ここにねじ込んで配管をしていきます。
(03:50) ちょっと断面にしますね。 はい、これで配管の断面が見えるようになりました。 このように、パイプの先端にねじを切って、このヘッダーですね、分岐部にも、雌ねじを切って、そこにねじ込んで配管を接続していきます。 はい、このようにねじの先端は、テーパ状に なっていて、円すい形状に加工されています。 こうすることで、ねじ込んでいくと、あるところで ねじが、進まなくなります。 そこで、しっかり最後までねじ込んで、シールをする 構造になっているんですね。 ですからシール性があるというのが、このテーパねじの、 最大の特徴となります。 このテーパ形状の、テーパの角度なんですけど、テーパは 16対1というテーパがついています。 ねじ山の角度は、55度ですね。表記の記号は、 雄ネジが R 、雌ねじが Rc 、という表記をします。 この図の場合は、1/4インチのテーパねじですので、 雌ねじの方は Rc 1/4 、雄ねじの方は R 1/4という表記をします。 テーパねじを締め込む時は、このねじ部にシールテープという 白いテープを巻いてから、ねじこみます。
(05:05) そうすることで、シール性が上がって、このねじ山から、 液体なりエアが漏れてくることはないと、いうことになります。 はいそれでは、次はボルトのサイズの剪定の仕方と、 嵌め合い代について、考えていきたいと思います。 このような貯水タンクがあっ たとして、下側にブラインドフランジが ねじ止めされている、形状を考えたいと思います。 はい、このように下側のフランジをボルト 締めしています。ちょっと断面にしてみますね。 はい、このような形で円筒の筒状の中に、水が入っていて貯水されています。 それで、下からブラインドフランジでねじ止め、円周上されていると、そういうような形状ですね。 この断面のところを見てみますと、タンク側にタップが切ってあって、下からボルトで止めています。 このような場合に、ボルトのサイズとこのねじ込み代ですね、 これをどのように考えるかを解説していきます。 貯水タンクに溜まっている水の重さを、 今3トンだとしましょう。
(06:11) 3,000kg 30000Nですね。 それで、今ねじ止めしているボルトのサイズを、 仮にM12と決定したとします。 円周上16 本で止めているとしましょう。 この時にどういう計算をしていくかを、解説していきます。 はい下から見ますと、このように円周上に16個の M12のボルトで止まっています。 この時のボルト強度が、許容範囲かどうかを検証していきたいと思います。 はいそれでは、ボルト強度の検討の時に、まず大前提として知っておかないといけないのは、ボルトがどのように破断するかですね。 破断の仕方は2つあって、ねじ山が全部せん断してしまって、 丸坊主になるような状態、これをせん断破壊と言います。 ねじ山の谷の径の所から引張りによって、ち切れてしまうのを、引張り破壊と言います。 それでボルト強度を検討するときは、この引張りの破壊の強度計算だけで ok です。 これはなぜかというと、せん断で破壊するような嵌め合い代ではなくて、せん断で破壊しない嵌め合い代を取っておいて、
(07:26) 引張りの強度計算だけをすると、そういう考え方です。 それで、嵌め合い代をどれぐらいとればいいかと、 いうことなんですけれども、これは呼び径の 0.8倍以上を取ってください。 今回の場合は M12などで M12 × 0.8で 約10mmの嵌め合い代が必要だということになります。 これは、なぜこういう風な理屈が成り立つかというと、メートルねじの波目の場合は、嵌め合い代が呼び径の0.6ある場合に、 引張りの応力とせん断の応力が、ほぼ一致するという 理屈になっているんですね。 ですから、0.8倍を嵌め合っていれば、大丈夫と、 こういう理屈が成り立ちます。 ですから、必ずナットの高さは、呼び径の0.8倍なんですね。 はい、こちらがナット寸法の表になります 。 ミスミのデータですけども、一番左の JIS1種のやつですね。 これの厚みが T です。 T の値を見てもらうと、例えば M10 だと8mmですね。 0.8倍です。 M12の高さは0.
(08:37) 8倍で約10ですね。 M20の高さは16と、こういうふうにすべて0.8倍になっているんですね。 ですから0.8倍以上嵌め合っていれば、せん断で破壊しないと、 いうことを覚えておけばいいと思います。 通常はわかりやすく1D と覚えるんですね。 M12だったら、12mm嵌め合うと、 M10だったら10mm嵌め合うと、そういう ふうに覚えます。 それで、今お話しした1Dとか0.8D という条件は、ボルトの 材質とタップ側、 雌ねじの材質が同材質のときに限った話です。 異材質になってくると、話が変わってきますので、 必ず同じ材質というのが条件だと、覚えておいてください。 はいそれでは、ボルトの強度検討をする前に、 ボルトの強度区分というお話をします。 ボルトの強度区分は、この表のように10段階に 分かれています。 3.6から12.9 まであって、通常 SS400相当のもの は、 4.6、4.
(09:45) 8あたりを使います。 一番硬い強いボルトは、12.9ですね。SCM 435と言って クロムモリブデン鋼を使っています。 今回は、この4.6のボルトを使うとして、 お話をしていきたいと思います。 この4.6 とか12.9とか、強度区分の意味なんですけども、 4.6の場合だと、4が400MPaという引張り強さを表しています。 破断強度ですね、400MPaで破断するボルトだということです。 右側の6は400の0.6倍、4×6 240MPaで 降伏点を迎えますと いう意味ですね。 ですから例えば、12.9だと1200MPa で破談、 1200MPa の90%の1080MPaで 降伏点を迎えると、 そういう強度区分の、ボルトだということですね。 はいそれでは、ボルトの強度区分の話が 分かったところで、
(10:50) このボルト4.6雌ねじの方、タップの方の材質を SS400として、 計算していきたいと思います。 はい、まず大前提として冒頭にお話ししたように、この ねじの嵌め合い代が0.8 D 以上必要です。 それで、今このタップの方の板厚が今12mmですね。 ですから嵌め合い代が、 12mmあります。 M12のボルトを今回採用しているので、 1D あるので、十分な強度があるということが言えますね。 ですから、せん断では破壊しないので、引張り強度で、検討して問題なければ、せん断では絶対破壊しないという、 保障がこれで得られているわけです。ですから、今から引張りの強度 計算のみを行っていきます。 はいそれでは、引張りの強度計算をして いきたいと思います。 最初に言った条件のように、水の重さが3トンですね。 30000Nの重さが、このボルトにかかります。 ボルトの本数が16本です。で、ボルトの この有効断面積、谷の径のところの断面積が決まっています。 M12の場合は 84.3mm^2 です。
(12:02) ですから、16本の ボルトで84.3の16倍、 1348.8mm^2の断面積を持っていると、いうことですね。 それで、ここに30000Nがかかるということです。 ですから、30000N÷1348.8で22.2N/mm^2、 22.2MPa という応力が算出されました。 この4.6のボルトは400MPaで破断だったので、破談に対する 安全率は、約18あるということになります。 一方で、降伏点応力が240MPaなので、 それに対する安全率は、約10.8と いうことになります。 これで十分な強度があると いうことが計算によって確認され ました。 それで、ここで一つ注意事項なんですけども、 ボルトの強度の安全率は、大きめに取った方がいいですね。 なぜ大きめに取った方がいいのかというと、 ボルトを規定トルクで締めた時、
(13:09) 締めた時点で、ボルトにはかなりの引張り力が、かかっているんですね。 通常は降伏点応力の 80%とか90%の応力になるように、締め付けています。 ねじを締めることで、ねじに軸力というのが働いて、ねじが引っ張られた状態になっているんですね。 この時点でねじは、 かなり降伏点に近い応力を示しているわけです。 そこに更に荷重がかかるので、 ねじの安全率の計算は、大きめに取るというのが常識となっています。 降伏点応力の80%の軸力、応力になるように締め付けている場合は降伏点応力まであと20%しかないわけですね。 その20%で荷重を受けると、という風に考えて計算しておくのが 良いと思います。 今回は安全率が降伏点に対して、約11ぐらいありましたので、 十分な強度があるという判定で、良いかと思います。 はい、それではボルトの材質選定の指標について、お話ししていきます。
(14:16) 材質選定するのに必要な指標は、 いくつかあって一つ目は強度ですね。 先ほどお話ししたように、強度が もたないとボルトの意味をなしません。 二つ目は防錆ですね。錆びないようなボルトが 必要かどうかです。 水がかかったりするところでは、錆びない ようなものを選ばなければいけません。 三つ目は耐薬品性ですね。いろいろな薬品がかかるところに使う ボルトは、耐薬品性がある材質を選ぶ必要があります。 四つ目は絶縁性ですね。電気を通したくない、そういう箇所に使うボルトは、導電性のあるボルトでは成り立ちません。 それで、五つ目は温度ですね。高温で使う場合は通常の4.6とか SS400相当のものでは、使うことができません。 300度を超えてくると、違う材質に 変更する必要があります。 はい、まず1番目の強度ですけども、先ほどお話しした強度区分の、この表から強度に応じて、選んでいただけたらいいと思います。 一番弱いもので引張り強さ300、一番強いもので 1200、いうふうに10段階に分かれています。
(15:28) はい2つ目は、防錆のあるボルトですね。防錆 があるというと、ステンレスボルトになると思います。 それで、ステンレスのボルトも強度 区分が、ちゃんと企画がありまして、 このようにオーステナイト系、マルテンサイト系、 フェライト系、と3つに分かれていて、 強度区分もね、それぞれステンレス用の企画が定め られています。 一番小さいもので引張り強さ500ですね。一番強いもので1100という ものがありますので、 強度と防錆能力両方の点から、考察して選んでいただけたらいいと 思います。 それで、この中で一番防錆能力の高いのは、オーステナイト系のステンレスです。 オーステナイト系もSUS304 から SUS316L ぐらいまで分かれていて、 SUS316L が一番耐食性が高いですね。 これは、医薬品の機械とか、防錆能力を 非常に高めたい場合に、使われている材質です。 SUS304は一番汎用的なステンレスで、 そこそこの耐食性があると、いうステンレスになりますね。 はい3つ目は、耐薬品性です。 耐薬品性がある材質は色々とありますけども、
(16:41) 樹脂の中で PTFE テフロンが一番耐薬品性が高いですね。 こちらは鍋屋バイテックの資料になります。 この左上の表 ここに樹脂ねじの特性というのが書いてあって、 PTFE は上から3つ目ですね。4ふっ化エチレン これが非常に耐薬品性の高い材質に なります。 はいこちらは、材質ごとに個別の薬品に対しての、耐薬品性を示してくれています。これを見ていただくと分かると思いますけども、 左から4つ目の PTFE テフロンですね、すべての薬品に対して耐性があると、いうのが分かると思います。 はい、次は絶縁性です。絶縁性の高い材質はセラミックですね。 セラミックの中でもアルミナが、一番絶縁性が高いです。 そういう用途の場合は、セラミックのねじを 使うのが、非常に有効だと言えます。 5つ目は温度なんですけども、この セラミックねじの最高使用温度、1500だと書いてますね。 非常に高温まで使うことができます。 ただセラミックの特徴として、弱点はですね非常に脆いんですね。
(17:55) ですから、ねじを締めるときに、きつく締めてしまうと、破断してしまうという可能性があるので、その辺には気をつける必要があります。 この右上の表のように、ねじり破断トルクというのが、 セラミックのねじには、 規定されていますので、このトルク範囲内で 締めるという配慮が、必要になってきます。 はい、最後に高温用ボルト SNB材というのを ご紹介します。 これは高温の中でも、400度ぐらいまで使えるボルトと、 いう位置づけになっています。 このボルトは、400度近い高温下でも許容引張り応力が、 常温とほとんど変わらないというボルトですね。 圧力容器、ボイラーとか、 原子力発電設備のフランジ等に用いられている、ボルトとなります。 それでは今日の動画は以上となります。 今日もご視聴ありがとうございました。 また次の動画でお会いしましょう。

・ステンレスボルト強度区分(ミスミ技術資料)
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/c1309.html

・鉄系ボルトの強度区分
https://www.toishi.info/jis_iso/kyoudo_zai.html

・樹脂ねじの特性(鍋屋バイテック)
https://www.nbk1560.com/images/ja-JP/product/contents/tokusei_jushi_enedzi_NBK/tokusei_jushi_enedzi_NBK_1.pdf

・特殊ねじの特性(鍋屋バイテック)
https://www.nbk1560.com/images/ja-JP/product/contents/tokusei_zaishitsu_enedzi_NBK/tokusei_zaishitsu_enedzi_NBK_1.pdf

・この動画は現役の機械設計エンジニアが作成しています
・講師は3D CAD歴26年、機械設計技術者1級を取得しています
・色覚弱者の方にも無理なく見ていただけるように、配色に配慮しております
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