機械設計技術 機械力学編 動力計算の仕方 仕事と仕事率

要求仕様からモータ動力の計算方法の手順を学びましょう。

0:00 仕様決定はまず動力
2:36 動力と仕事
4:29 仕事率
5:43 伝達効率と機械損失
8:45 安全率の考え方

 

【書き起こし】機械設計技術 機械力学編 動力計算の仕方 仕事と仕事率 

(00:06) はい、こんにちは中村です。いつもご視聴ありがとうございます。 このチャンネルでは、 inventor 3 d の操作方法や機械設計についてお話しさせていただいています。 え、今日はね、機械設計の動力の計算ということで、お話ししていきたいと思います。 アクチュエーターの出力を計算する方法を説明していきます。 アクチュエータってね、何かというと機械を動かす大元の動力ですね。 モーターだったり、油圧ジャッキだったりね。 そういうものの出力をまず計算しないといけないんですけども、その計算方法についてお話ししていきます。 えー、以前の動画でね、お話ししています機械設計の仕事、5つに分かれるというお話をしてるんですけども。 これの4番ですね。今日は。この4番の基本設計ができる人、仕様決定ができる技術計算ができる人。 このレベルのお話をしていきます。 このね、以前に仕事の種類とレベルを紹介した動画があるんですけども、この詳しい内容を知りたい方は右上にカードが出てきますので、そちらを参照してみてください。 今日はこういう題材を用意しました。 えー、重さ70キログラムのものを持ち上げる昇降台ですね。
(01:29) これを設計してくださいというお話ですね。 この題材はね、実は去年私のところに実際に来た仕事ですね。 お客様からご連絡いただきまして、えー、重さ70キロある装置ですね。これを200ミリほど上昇させたりと設計条件は右側の赤い文字のところですね。 防水にしてくださいと、水をかけて洗うので防水にしてください。ストロークは200ミリです。 で、製品70キロのものを持ち上げたいと。 アクチュエータはモーターを使ってください。これだけなんですね。 それを設計して見積もりを出してほしい。こういう依頼があったんですね。 これをそのままね、題材にしていきたいと思います。 皆さんこういう案件が来た時に、何から手をつけられますか、ということですね。 これまず決めないといけないのはモーターの出力、動力なんですね 。 大元のモーターの出力を決めないと、何も決まらないんですね。 それをまず決めないといけません。今日はそのね、計算の仕方をお話ししていきます。 はい、まずは動力計算ということで、先ほどの条件からね、動力を計算していきます。 で、まず動力とは?ということで動力の話をしていきたいんですけども。
(02:42) これ私試しにね、ちょっとネットで検索してみたんですけど、 動力とは?キーワードで検索すると、ほとんど電気の話が出てくるんですね。 動力っていうのは、ま、電気もエネルギーですから、確かに動力なんですけども、 ここの機械のね、動力っていうのは、電気の話ではなくて、動力っていうのはモーターとかで何ワット何ワットっていうと思うんですけど、 これは何かっていうと仕事率なんですね。 では仕事率って何かというと、1秒あたりにする仕事のことを仕事率といいますね。 じゃあ仕事ってなんかというと、  重さx動いた距離 これが仕事なんですね。 これを理解してたら、あとは計算するだけなんですね。 この題材の図に戻りまして、重さ70キログラムのものを200ミリあげてほしいというのがお客様の要求なので、これを達成するために必要な仕事と仕事率を計算していきます。 まず仕事の計算なんですけども、重さ70キログラムですね。
(03:52) 距離が200ミリなので、このような式になりますね。 70キログラム x9.8 これニュートンに直しているだけですね。 1キログラム重 が9.8ニュートンなので9.8倍します。 で、200ミリストロークなので、単位はメーターに合わすので、0.2メーターということで 計算すると137.2ニュートン・メーターと。 これが仕事ですね。 この70キロの重さの物を持ち上げるのに必要な仕事は、137.2ニュートン・メーター。 で、次仕事率ですね。 はい、仕事率は先ほど出した仕事137.2ニュートン・メーター。 これを何秒で完了させますか、ということですね。 何秒で200ミリ持ち上げようと考えた時に、特にお客様から指定がなかったので、私は10秒で設定しました。 1秒間に約20ミリですね。
(04:56) そうすると仕事率の計算はどうなるかといいますと、 137.2これが仕事でしたね。 を10秒で割って、 13.72ニュートン・メーター毎秒 ということになります。 ニュートンメーター毎秒っていうのが、そのままワットっていう単位に等しいので、 13.72ワットが必要ですよ。 これで出力が計算できましたね。 はい、これでわかったのは70キロの重さのものを200ミリ持ち上げる、10秒間かかった場合におおよそ14ワットの動力が必要だということがわかります。 まぁ、非常に簡単ですよね。掛け算して時間で割るだけなのでね 、全然難しくないと思います。 はい、ではモーターの出力は14ワットでいいのかということですね。 13.
(06:00) 72ワットとでたので、14ワットのモーターを用意すれば機械は持ち上がるのか というとそうではなくて、 機械には伝達効率というのがあるんですね。 この図のように この荷物を打ち上げるのに色々な機構が必要ですよね。 モーターを減速したり持ち上げる機構 いろいろ方法はあると思うんですが、その状況に合わせてそれを選んでいくんですけれども、何にせよ機械の摩擦が発生するわけですね。 例えば、送りネジで上昇させるにしてもネジとナットの摩擦があります。 減速機は減速機で 摩擦があってグリースが入っているので、グリースの粘性が抵抗になるわけですね。 その抵抗がモーターから入力されたエネルギーが先ほど言った摩擦で奪われて荷物まで到達するわけで、その差を伝達効率って言うんですね。 例えばこの図でいうとモーターが100と いうエネルギーを入力してもう減速機とか昇降機構で30%を奪われましたと、そうすると荷物を持ち上げるエネルギーは70とこういうことになるんですね。 これが伝達効率ということです。 はい、では摩擦のあるところの伝達効率はどれぐらいなのかというのを調べてみました 。
(07:10) はい、今回使うモーターはオリエンタルモーターのギヤヘッド付きのモーターを使いました。 モーターに減速機が付いてるわけですけども、それの減速機の伝達効率というのが ちゃんとモーターのメーカーのページに載っているですね。 今回採用しようとしたモーターの減速機の効率は73%と書いてありました。 27%ギヤヘッドで奪われるということですね。 これがまず伝達効率の損失、機械損失の1つ目ですね。 この資料のリンクを概要欄に貼っておきますので、よろしければ参考に見てみてください 。 はい、次はウォーム減速機の効率ですね。 モーターについている減速機、プラス ウオーム減速機を今回は採用しています。 ウォーム減速機はね、セルフロックという機能があって安全機能を果たしますので、今回はウォーム減速機もプラスして採用しています。 モーターが1800回転でモーターの 減速機が100分の1を採用しているので、ウォーム減速機に入力される回転数は18回転ですね。
(08:23) で、下の表が小原歯車の技術資料より抜粋しています。 ウォームの回転数ね、先ほど18回転といったので一番左の100回転のところ参照すればいいと思いますね。 おおよそ見てると効率が35%から42%になっているので、おおよそ40%ということ になりますね。 はい、減速機とウォーム減速機、両方の伝達効率が分かりましたので、そこからモーターの出力を計算してみましょう。 はい、一番最初に荷物を持ち上げるのに必要な動力は13.72ワットだと計算しました。 摩擦によって奪われる伝達効率というのがあるので、それを加味して計算していきます。 13.72ワットに、まずギアヘッドの伝達効率0.73ですね。さらにウォームギアの伝達効率0.
(09:28) 4を加味して計算すると、必要なモーター出力は47ワットになりますね。 13.72割る0.73割る0.4で、47ワットが必要だということになります。 で、この結果からね 50ワットのモーターを用意すればいいんだということになるんですけども、ここでさらにね、安全率を加味したほうがいいですね。 なぜかというと計算値というのはあくまで理論値であって、実際と多少の誤差があるんですね ですから、必ず安全率をいくつかみて、それを盛り込むというのが通常のやり方です。 例えば部屋の温度が低いときはグリースは 粘々して硬いですね。 減速機の摩擦以外にもオイルシールの摩擦であるとか、軸受のベアリングの摩擦であるとか、そのあたりも必要になってきますね。 で、この47ワットに安全率2をかけて、94ワット、 そうすると採用するモーターの出力は100ワットあればいいなという結果になりますね。 で、先ほど言ったように伝達効率が多少前後して計算が狂ってたしとしても、2倍の安全率があるので2倍は狂わないと思いますね。 ですから安全率2をとって100ワットのモーターがあれば十分動くでしょう。
(10:42) こういう風にしてモーターの出力を決めていきます。 はい、今日のまとめですね。 モーターの出力は重さ 距離 時間で簡単に計算できます。 重さはニュートンに換算、距離はメーターに換算、時間は秒で計算します。 で、重さニュートンかける距離メーターを時間で割ったら、 単位はニュートンメーター毎秒ですね。 これがそのままワットということになります。 で、ワットは何だったかというと仕事率ですね。単位時間あたりにどれだけの仕事をするかということですね。 で先ほど示した資料のモーター減速機の伝達効率はおおよそ70%ですね 。 ウォームギアの伝達効率はおおよそ50%とこれを頭に入れておくと、どんなね減速機が来ても、大体おおよその計算はこの70%50%で計算できますので、ザクッと計算するときはね、この70と50という伝達効率を頭に入れておくといいと思います。 実際にはね回転数とかギアの種類によってね、ある程度変わってくるんですけどもね。
(11:56) おおよそのこういうふうに覚えておくといいと 思います。 モーター減速機はね、この表を見る限りだいたい80%から60%ぐらいですかね。一番低いので59%。なので間をとって70%とみているのがいいと思いますね 。 で、ウォーム減速機については一番低いので35%、一番高いので67%ぐらいですね 。 まあこれもちょっと悪い目に見て40%と見ておけば間違いないと思います。 この2つの資料はね、概要欄にリンクを貼っておきますのでよろしければ参考に見てください。 はい、今日は動力の計算の仕方についてお話ししました。 ぜひ皆さんね、こういう白紙の状態から機械を考えないといけない案件が来た場合にはね、まずモーターの出力を決める計算をしてみてはいかがでしょうか。 はい、今日はモーターの主力動力の計算の仕方についてお話ししました。 今日の動画は以上となります今日もご視聴ありがとうございました。
(13:02) また次の動画でお会いしましょう。お気に召されましたらチャンネル登録をよろしくお願い致します。

・オリエンタルモーター技術資料
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/data01/

・小原歯車ウォーム効率
https://www.khkgears.co.jp/khkweb/search/tobiraLink.do?method=series&gearType=10&lang=ja#:~:text=%E2%96%A0%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%AE%E3%83%A4%E3%81%AE%E5%8A%B9%E7%8E%87,30%EF%BD%9E90%25%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

・この動画ではCAD操作がわかりやすいように マウスの左クリックは赤丸、右クリックは青丸のアニメーションがでますので参考にしながらご覧ください。
・講師は3D CAD歴26年、機械設計技術者1級を取得しています
・色覚弱者の方にも無理なく見ていただけるように、配色に配慮しております
#機械力学#機械設計#機械設計CADの学校動画一覧

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