マルテンサイト

焼入れによるマルテンサイト変態は、鋼の硬度と強度を向上させる効果的な方法です。マルテンサイトは、オーステナイトが急速に冷却されることで形成される硬くて脆い鉄炭素組織であり、鋼の機械的性質を大幅に改善します。

焼入れプロセスは、以下の手順で行われます。

鋼をオーステナイジング温度(通常は723℃以上)まで加熱します。これにより、鉄と炭素が均一に混ざり合ったオーステナイト組織が形成されます。
鋼を急速に冷却することで、オーステナイトがマルテンサイトに変態します。通常、水や油を使用した急速冷却が行われます。
焼入れ後、適切な硬さと靭性のバランスを得るために、焼戻し(適度な温度での再加熱)が行われます。
マルテンサイトの量と形状は、焼入れ条件や鋼の組成によって異なります。炭素含有量が高いと、マルテンサイトの硬さも高くなりますが、同時に脆さも増すため、適切な炭素含有量の選定が重要です。また、焼入れの温度と冷却速度を適切に制御することで、所望の硬さと靭性が得られます。

マルテンサイト変態により、製造業では機械部品や工具などの性能向上や寿命延長が図られます。ただし、焼入れによる熱応力や歪みが生じることがあるため、設計段階で適切な焼入れ条件の選定が重要です。

Skip to content